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そもそも、なんで「働く」んだっけ?
~ニート株式会社の実験と冒険~

現在観測 第20回

ニートが見つけた、人間としての「活動」

 

そんな中で、自分たちのような人間でもできる、お客さんに高い期待を持たせない「クオリティの低いサービス」をあえて立ち上げ、できることから無理なくマイペースに活動するというメンバーも出てきました。

 

その一つが、「レンタルニート」というサービスです。これは、ニートであるメンバーが1時間1,000円で一緒に遊ぶ、という時間を提供するサービスなのですが、企業から依頼されるような「労働」はしない、というのが条件です。

行列に一緒に並んだり、喫茶店で話し相手になったり、一緒にプラモデルをつくったり。就労経験のない自分でも確実に提供できる価値は何なのかを考え抜き、お客さんの期待を裏切ることなく、社会との接点をつくろという試みでした。

 

サービスを立ち上げたメンバーに話を聞くと、お客さんに過剰な期待をさせてガッカリさせないように、問い合わせのメールにもゆるい感じで返答し、待ち合わせの約束や依頼内容に対しても、あまりしっかりとは約束しないようにしているというのです。ところが、そのほうが「思っていたより楽しかった!」と言って、最後には感謝されるのだとか…。

 

この「クオリティの低いサービス」がお金にならなくても、ちゃんとした「仕事」だとは言えなかったとしても、まさに人間としての「活動」になっているということがとても大切だというのです。朝起きて、ケータイに連絡が来ていて、誰かのために、何かのために活動する。自分が、その日存在する意味がある。

 

メンバーの中には、会社同士で出会って、結婚するカップルも出てきました。

もちろん、その後の生活は簡単なものではないみたいですが、真剣に人生を営んでいるようです。そして、その「営み」を維持するために仕事を始めたようです。

 

自分一人では「働く意義」をなかなか見いだせなくても、パートナーのいる新しい人生の営みを支えるために、誰に求められたわけでもなく、迫られたわけでもなく、自分たちで望んで働く。自分の「存在価値」を求めて、人生を冒険する。これが、人間の正しい姿であるような気がします。

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若新 雄純

わかしん ゆうじゅん

コミュニケーションプロデューサー/慶應義塾大学特任助教。福井県若狭町生まれ。慶應義塾大学大学院修士課程(政策・メディア)修了。専門は産業・組織心理学とコミュニケーション論。全員がニートで取締役の「NEET株式会社」や女子高生がまちづくりを担う「鯖江市役所JK課」など、多様な働き方や組織のあり方を模索・提案する実験的プロジェクトを多数企画・実施中。著書に『創造的脱力』(光文社新書)がある。

若新ワールドhttp://wakashin.com/


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